広島高等裁判所 昭和26年(う)777号 判決
起訴状並に原審第二回公判に於ける起訴事実の訂正によれば本件公訴事実は「被告人は政府の免許を受けないで昭和二十五年十月頃から同二十六年三月六日頃までの間数十回に亙り肩書自宅に於て密造合成酒約五斗一升を尾上嘉六外十八名に販売して酒類の販売業を為したものである」というにあつて、罰条として酒税法第十七条第六十二条第一項第四号を掲げておる。之に対し原判決は罪となるべき事実として「被告人は公に認められた場合でないにもかかわらず昭和二十五年十月七日頃から同二十六年三月初旬頃までの間被告人の肩書自宅において政府の免許を受けない者の製造した清酒五斗一升を尾上嘉六外十八名に譲渡したものである」との事実を認定している。然らば右の如く被告人が短期間内に多人数に清酒を繰返し販売した以上右は被告人が清酒の販売業を為した事実を認定したごとに帰着する。
そこで右被告人の所為が起訴の如く酒税法第六十二条第一項第四号に該当するや否やについて考えるに同条第一項第四号は「免許を受けずして酒類の販売を為した者」とあり、又同法第十七条には「酒類の販売業を為さんとする者は政府の免許を受くべし」とあり、更に同法第二条には同法所謂酒類の定義を掲げている。
之によれば同法第六十二条第一項第四号に所謂酒類は同法第二条所定の酒類に該当するものであれば足り正当に免許を受けて製造したものであると密造であるとを問わない趣旨と解すべきである。
このことは控訴趣意第一点に所論の如く密造酒類の反覆売買につき期間数量等が概括的に認められるにかかわらず個々の販売の日時数量等が確定し難い場合においても之が取締を必要とする点からも了解せられることである。よつて原判決が前記事実につき酒税法第六十二条第一項第四号を適用せず個々の販売所為をとらえて同法第五十三条第六十二条第一項第三号を適用処断したのは法律の適用を誤つたものであり判決に影響を及ぼすこと明かであるから原判決は破棄を免れない。